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           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第162号       ’02−11−29★

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     ケース:ぬるま湯

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●いくつもの企業を

 

蘇らせた<再建名人>がTV番組で、司会者の質問に答えていました。

一番難しかったのは? 「社員に意識を変えてもらうこと、、、」

 

で、どのように? 「結局、新しい人を入れました。 頭が切り換わら

ないんですよ、前からの人は、どうしても、、」

 

 

「分かってるよ」と言いながら、行動ぶりは全く以前通り。 どの角度

から見ても、ワカッテナイ人と違わない、、、 どこにもいますねえ。

 

頭はワカッタつもり、でも、心は「分かってない」。 変えて欲しいの

は行動ぶり、それはその人が(<認>識ではなく)<意>識を自発的に

変えることによってのみ可能。 しかし

 

新しい方向へ導こうにも人間の常、自分を変えることには消極的、いや

抵抗して容易に変わろうとはしないものです。 そんなのが<心を入れ

換える>まで見守るノンビリは名人に許されない。 仕方ない、<人の

入れ換え>で行くか、、 だったのでしょう。

 

問題が難しすぎたら、問題を変えれば良い。 学校の試験じゃないんだ

から、、など申します。 ビジネス社会においては成果を挙げることが

<正解>、解きやすい形に問題を<料理>する才覚が不可欠です。

 

過日のNHK1ウィークエンドスペシャル <ぬるま湯から抜け出せ>

〜脱系列企業 苦闘の1年〜 は、その困難に挑む人々のドキュメント。

主役は物流会社<ゼロ>の岩下社長。

 

*   *

 

元は日産自動車 100%出資の系列企業、<日産陸送>。 1961年の設立、

従業員1千、トレーラー800台の業界最大手、給料の高さも業界一。

 

親会社の新車輸送だけで仕事量は十分、黙々運んでさえいれば良かった。

ところが親会社の急速な業績悪化(1990年の国内生産台数241万から、

1999年には138万台、10年で100万台減!)で陸送も減り、再建

請負人ゴーン新社長の基本方針は、「子会社は売却!」。

 

もちろん日産陸送も、だったが岩下社長は「売られるくらいなら、、」

と独立を志し、親会社から株を買い取る資金を外国の投資会社に仰いで

8ヶ月の交渉。 厳しい条件を呑んで昨年、<ゼロ>に生まれ変わった。

 

  ゼロからやり直そう、、 か、何とも過激な社名。 岩下氏の覚悟

  のほどが偲ばれます。 問題は、社員諸氏の覚悟、、

  

そしてたちまち、赤字4億円。 新顧客の獲得と賃金カット平均15%

を含むコストダウン、<入るを図って出ずるを制す>に努めないと立ち

行かない状況となった由。  

 

そこまで状況が変わっても、変わらないのは<社員の意識>。 「生活

設計が狂う」、「住宅ローンがある」、、即ち<制す>るのは困る、と。

ご尤もだがやはり<状況>の変化、心ではワカッテナイようです。

 

*   *   *

 

一方、岩下社長は毅然、「痛みを和らげる気は全然無い」。 ゴーン氏

社長就任時の挨拶、「改革に妥協は無い。 問題を解決するのは今だ」

を思わせる背水の陣。 <痛み>は不可避、なら真正面から、の勇猛心、

 

部下を督励して<新顧客の獲得>に立ち向かわせる。 その一つは、

 

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●中古車輸送ビジネスへの参入。

 

年間550万台、新車輸送に匹敵する規模です。 が、相手は<他人>、

受注交渉は不慣れ。 これまでいかに楽をしていたかを思い知る羽目に。

 

たとえば、中古車は1台ごとに車種が違うだけでなく、中にはエンジン

のかからない車もある。 ところがこれまで、1台当たり所要時間すら

把握していなかったので、請け負い料金が設定できない始末。

 

現場は長らく<残業>で稼ぐ慣わし、即ち低効率が高収入のもと、効率

向上には無関心。 親会社が固定客なら誰とも競争する必要無し、料金

も言いなりの受け身商売、<待ち>の姿勢が染み込んで急には抜けない。

 

だが、中古車業界は流動的。 顧客たるディーラーに働きかける姿勢が

常に必要。 それが出来ない、では<普通以下>、と分かるまでが大変。

 

 <普通>とはたとえば<他人>と同じレベルの付き合いが出来ること。

 <系列>ビジネスは内輪付き合い、<ぬるま湯>同士の特殊閉鎖社会。

 そこから出て冷たく感じる浮き世の風は<普通>の温度なのですが、、

 

 

そこでコンサルタントを招き、社内から選抜した4人のチームを働かせ、

全国の事業所を徹底的に再点検してみたところ、特に大規模な営業所の

効率が悪い、と判明。

 

その現場に張り付いて掴んだ特徴的事実: 整理整頓が良くない、挨拶

の声が小さい(あるいは、無い)、元気が無い(暗い)、、、

 

電話がかかって来ても、内線なら応じるが外線には出ない。 新顧客は

すべて<外>なのだから、これでは受注放棄。 じゃ<内>での活動は

熱心なのか? いいえ。

 

派遣社員に訊くと、「役割分担が不明確で、上に訊いてもよく分からず、

本社に問い合わせることが多い」、「事務所を仕切っている人がいない」、

要するに「どうしようも無い」、マネジメント不在。

 

  <正社員が派遣社員に全然尊敬されていない>と別件149号でも

  書きましたが、どこでも、なんですな。 何が<正>なのやら?

 

*   *

 

どの事業所でも有益な意見を出したのは<派遣の女子社員>だった、と

いうところが象徴的。 考えてみれば彼女ら、いわば軒先借り個人企業。

やたら依存はしない、甘えが無い、即ち自立的。

 

比べて正社員は依存的、これまで仕事も支払いも、親会社から頂くだけ。

料金交渉もせずに済んでいたのが裏目、今や対外交渉資料として必要な

<標準原価>も何と、算出したことが無かった、由。 しかも、

 

それに気付いたのが前述、海千山千の中古車ディーラーへ注文を取りに

行ってから。 どこまで値引きして良いのか、それで利益が守れるのか、

<本社営業>さんすら把握していなかった、という恥ずかしさ。

 

加えて「車置き場の面倒を見て欲しい」など、予想外の要求も出される。

「40年間、海底300メートルのタコツボ」(岩下社長)で「考えた

ことの無い人たち」よ、ジョーク的<新品同様の脳>、この際使い給え。

 

*   *   *

 

しかし、使おうにも不慣れ、<考えたつもり>でも<考えてない>同然。

社長指示で作成した<コスト削減案>も、実質的には<外注先子会社に

負担を強いるだけの案>。 おお、何たる低E(前々号参照)!

 

ひとの痛みは三年でも我慢できる、か、自社側の削減努力無し。 その

虫の良さを<本部長>以下、誰も自覚していない風情。 それが社長の

不満、と理解できていないこともアリアリ。

 

  積極的に働く習慣の無い人々、無意識的に「自分たちの負担が増え

  ないこと」という WANT を設け、それに最大の重みを付けたのです。

  岩下さん、彼らを買いかぶりましたな。

 

しかも、<車を運んで利益を出す会社>にしようと躍起の社長と向かい

合って、これじゃダメなのかなあ、の表情。 側近レベルですら、意識

は<ただ車を運ぶ会社>当時と変わってないこと歴然。 

 

  そういうお座なりな連中には、漠然たる<コスト削減案>ではなく、

  <○○コスト削減案>と特定して、意識を集中させた方が宜しい。

  議論の方向が具体的に感じられるステートメントにするのがコツ。

 

  さらにその案の実施によって実現達成すべきことを MUST、WANT で

  示しておくことも必要。 それらを自社経営資源の有効活用に関連

  させておけば、やむを得ず?<自助努力>的になるでしょう。

 

  初めにそうした点を共有化しておけば、案が出て来てから「こりゃ

  何じゃ?」ということにはならずに済みます。 人のためならず、、

 

*   *   *   *

 

ゴーン氏は(第22号既述)ルノーから分身30人を引き連れて赴任し、

日産自動車に<驚異のV字回復>をもたらした。 彼がしたことは

 

著書<ルネッサンス>によれば、現場の声を聴き、コアの問題を特定し、

優先順位を確立し、責任権限の所在を明確にし、部門間を横断的に機能

させ、成果本位に人材を登用し、、

 

つまり、アタリマエの実践、でした。 それまでの日産自動車は(その

第?部にあるように)<マネジメント不在>、アタリマエが行なわれて

いなかった。 それを行なわせるのに30人、なら物流業は、、 

 

自動車製造業ほど複雑でないにせよ、有能な側近が最少数名は必要です。

前記<4名>がそれか知らないが、果たして彼らに<本部長>クラスを

平伏させるほどの権限が付与されるのか、どうか?

 

もちろん<本部長>クラスが<心を入れ換え>ればそれに越したことは

無いが、、それは頭書の通り無理。 さて社長、どうなさいます?

 

  岩下氏は<目の配り、疲れを知らぬ働きぶり、業務への献身、どの

  部分を取っても良い手本になる>(第22号)こと、ゴーン氏並み。

  その人にして尚、彼らをピリッとさせることに成功しておられない。

 

  下は上に倣うもの、、だが彼らには、岩下氏に倣う様子が見えない。

  あのままでは良くない手本、<名人>ならもう<入れ換え>を考え

  始める段階、かも。

 

  私なら、彼ら上位者に状況分析:SAを課しますね。 状況認識は

  どうか、課題化できているか、A、H、S項目が網羅されているか、

  優先順位が適切に定められているか、など一目瞭然です。 それが

  出来ていなかったら、<長>にしておくわけには行かない、、、

 

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●見えない<意識>を揺さぶるには

 

見える<制度>を変えるに限る、かどうか、コスト削減目標を掲げさせ、

その達成度によって給与額が決まる<成果主義の新人事制度>に転換。

 

  前号のBM的観点からすると、そのため<9・1>傾向が高まりは

  しないかと案じられます。 が、中にはヒットもありました。

 

他メーカー(たとえばトヨタ)の陸送会社と連携し、中間地点で互いの

積み荷を交換、帰り道を空車でなくする案も実行し始めた由。 「名が

<日産>でなくなったからこそのフリーハンド」と岩下社長。

 

  これによる稼働率の向上はA項目、輸送技能を存分に発揮させる点

  からするとH項目、社会的資産の有効活用とか業際的協力の促進と

  いう面はS項目、、 ほぼ満点の案。

 

 

一般に現場の仕事は<目に見える>ので工夫も評価もしやすいが、管理

職の頭脳作業はその反対。 訊けば「いま考えております」と答えるに

違いないが、<下手の考え>では<休むに似たり>。

 

まして部門ごと、営業所ごとに固有の事情が付いて回る。 うわべでは

<総論賛成>でも、内心はたいてい<各論反対>。 その足並みを揃え

させるには、まず<課題>と<狙い>の共有化です。

 

案の善し悪しはそれに照らして判断、とすれば明快、かつ公平。 各人

の独自判断を尊重しないではないが、それらはたいてい<ぬるま湯>的

かつ自部署本位。 それではダメ、今はこれ、という共用の新しいモノ

サシを持たせる必要があり、それは<考えて>作らなくてはならない。

 

手早く作るには、専用ツール。 たとえば Rational Process。 あの

4領域でマネジメントのあらゆる局面に対応でき、シートを埋めて行く

討議の中で<独自判断>も生かせるし、ヌケモレ・カタヨリ、手戻りが

無くて済みます。

 

画面で拝見した限り、岩下社長、そうしたツールをお使いではなかった。

Rational Process 的に議論をリードなされば、意識が改まったも同然

の結果が自動的に得られ、、 となるのになあ。

 

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<系列>子会社の<ぬるま湯>ぶりから連想したのは<特殊法人>問題。

 

子会社を切って(だけでなかったことはもちろんですが)親会社の業績

は<V字回復>、子会社もシャッキリし始めた。 ならフラクタル、

 

日本経済再生にも「特殊法人切り捨て!」が有効。 そして多分、そこ

でも Rational Process が役立つはず、、、   

                          ■竹島元一■

     ■今週の<私の写真集から>は ★ハーミテジ★

 

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